朝日新聞掲載:弾圧に殉教、擁護…お寺に十字架、東北の潜伏キリシタンを語り継ぐ
https://www.asahi.com/articles/ASQBJ7D8WQB4ULUC00L.html
2018年の世界文化遺産登録や遠藤周作の小説「沈黙」など、潜伏キリシタンの歴史は九州でのイメージが強い。だが、東北でもかつて多くのキリシタンが潜伏を余儀なくされ、悲惨な殉教があった。研究や伝承の努力が続いている。
9月17日、岩手県一関市藤沢町の時宗の寺院・長徳寺に慰霊碑が建立された。「南無阿弥陀佛(ぶつ)」の文字とともに、十字架が記されている。江戸時代に殉教したキリシタンを弔うため、渋谷真之住職(46)が私財を投じて造った。
除幕式と慰霊祭には、キリスト教関係者も参列した。カトリック水沢教会(岩手県奥州市)の高橋昌神父(86)は「お寺にキリシタン殉教の慰霊碑が建てられるのは画期的。これを機に殉教のことを皆さんに知って頂きたい」。プロテスタントの日本基督教団石巻栄光教会(宮城県石巻市)の川上直哉牧師(49)も「放っておくと人間の尊厳は壊れていく。だれかが弔ってくれるから人間は人間でいられる。感謝をお伝えしたい」と語った。
一関市藤沢町は旧仙台藩の領地で、寺に近い大籠(おおかご)では、1639年から数年間に300人以上のキリシタンが処刑されたと伝わる。隣接する米川(宮城県登米市)でも約120人が処刑され、馬籠(まごめ)(同県気仙沼市)では信者の大規模な検挙があったという。一帯は藩の製鉄地帯で、各地に多くのキリシタンがいた。