岩手日日新聞掲載
長徳寺蘇民祭は6日、 一関市藤沢町保呂羽 の同寺で行われた。 新型コロナウイルスの感 染拡大を考慮し、蘇民袋を奪い合う 「袋ねじ り」 を取りやめるなど、 前回に続いて規模を 縮小して実施。 境内の不動堂で護摩祈祷 ( とう)を営み、 参拝した地域住民らが五穀豊 穣(ほうじょう) や家内安全、そして疫病退 散を願う気持ちを一層強くした。
同祭は、同市花泉町にあった不動尊を18 94(明治27)年に同寺が譲り受け、それ 以来継承している歴史ある祭り。1949年 から数年間行われた袋ねじりは、一時期途絶 えたものの、 10年ほど前に復活。 現在に至 るが、新型コロナ感染防止の観点から、 今回 も水垢離(ごり) や柴燈木 (ひたき) 登り、 余興などとともに中止した。
同日は冷え込みが厳しくなったが、祭り関 係者の熱気はむんむん。 鬼子の面を背負った 男児が下帯姿の男衆に担がれ本堂前を出発 し、 不動堂までの参道を登った。 祈祷を執り 行った後、参拝者に小間木など特別祈祷札を 贈った。
各地の蘇民祭に足を運び、 写真に収めてい る菅原唯夫さん (72) = 花巻市中北万丁目 =は「悪いことが続いている世の中、多くの 人たちが安泰を願ってこの奇祭を訪れる。 人 とのつながりが生まれ、 笑顔でまた再会でき る。これが大事だ」 と蘇民祭への思いを語 る。
不動尊蘇民祭精進講本部の小野寺恒雄本部 長 (77)は「疫病退散を願って祈祷のみを 行った。 『早くウイルスがなくなってほし い』。そう願う人々の多さを思い知った」 話していた。
同寺の蘇民祭は地域や宗派を問わず、心の よりどころとして参拝者をもてなすのが特 徴。例年は精進料理を提供するなど、 誰もが 楽しめる祭りとなっている。